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「恋はイリュージョン」

9月6日(土)は、日本ソーシャルワーカー協会の勉強会に行きました。
ここで講師をされることになっていた、東海大学の北島英治先生には、私は専門学校で教えていただいたことがあったので、北島先生にどうしても再会したくて、出かけたのでした。

私が福祉の学校で勉強した中で、北島先生が一番好きでした。
・・・何がどう好きなのかは、正直あんまり正確には覚えてなくてですね(苦笑)
福祉関係の友人と議論をしてたときに、

友人「ふーん、北島先生って、どういう人だったの?何を教えてもらったの?」
私「なんだっけ・・・」
友人「・・・

みたいな会話をしたこともありましたが(^^;

ノートをひっくり返して見てみたら、人間の心理に関わる部分を中心に教えてもらったみたいです。
私のブログを読んでる人も、大体、何らかの形で人と関わりのある仕事をしている人が多いと思いますが。
人と関わっていると、「なんでこの人はこんな言い方をするんだろう」「なんでこんな捉え方をするんだろう」って、腹が立ったり悩んだりすることがあるでしょう。
それについて、説明してくれる授業だったんです。

たとえば、「被害妄想」について。
ほんとは自分の心にあるだけの考えが、たとえば「誰かを憎んでいる」というような、否定的なものだった場合に、「本当はこんなひどいことを考えちゃいけないはずなのに考えてしまう」という状況になりますね。その否定的感情を自分自身で処理しきれなくなった時に、「これは自分が思ってるんじゃなくて、自分以外の誰かが言っているんだ」と信じ込むことで無意識に自分の心を守ろうとすることがある。
例えば、ほんとは自分自身が相手を嫌いなのに、「相手が私を嫌っている」と思い込んでしまう、とか。

そんな風に、人の心の動きについて、具体例を挙げながら説明してくださいました。人の心の動きのメカニズムを理解することで、福祉の現場での面接や利用者さんとのやり取りで悩んだときに、抜け道を探すことができるから。


先生が挙げた具体的な心理状態の事例で、一番印象に残ったのが、恋愛について。

小さいときから積み重ねてきた経験(例えばお父さんやお母さんとのかかわり)の中で、「自分にとっての理想の異性像」というのができあがっていて、それにたまたまぴったり当てはめることのできそうな人を見つけると、勝手に「運命の人だわ」と思いこんでしまうんだと。

その「理想の異性像」が偶然たまたま相手も合致したりすると、お互いが「運命の人だわ」と勝手に思いあうので、「大恋愛」となるのだと。

「つまりは、恋はイリュージョンなのです。」と北島先生は結論しました。。


ははあ、なるほどと納得して、その後ボーイフレンドとデートをしたときに、「あのね、恋というのはイリュージョンなんだってよ!」と言ったら、とても嫌そうな顔をされたものです・・・(苦笑)


そんなわけで、北島先生が何を話してくれたのか、といわれると、「恋はイリュージョン」というセリフが強烈に印象に残っているのですが(^^;


でも、うまく言葉に言い表せないんだけれど、そんな強烈な印象だけではなくて、北島先生から教わった様々なことが、私の社会福祉士としてのあり方にとても影響を与えているという感じがしていて、それをもう一度確かめてみたいと、前からずーっと思っていました。

それがうまい具合に公開勉強会の講師をやるっていうじゃないですか。
しめしめ、と思って出かけたのです。

今回の講義のテーマは、「ソーシャルワークの価値と倫理」。

私は昨年9月、初めてやった一般質問の冒頭で、「若輩者ではありますが、社会福祉士という資格を持った専門職として揺るがぬ信念を持ち、人権の尊重と社会正義の実現を行動の基準に置いて議会活動に取り組んでまいりたいと考えております。」という一言を言いました。
読み直すと、「うっへー!」という感じですが(^^;)、なんでこんな、「カッコイイ」ことを言ったかというと、これは私の言葉ではなくて、社会福祉士の倫理だからなんです。あえて言うことで、自分自身を取り締まろうと思ったんです。

北島先生は、「日本語に訳すと真意が伝わりにくいから」ということで、資料に原文を出しました。そこで私も原文を書いてみます。

The social work profession promotes social change, problem solving in human relationships and the empowerment and liberation of people to enhance well-being.

Principles of human rights and social justice are fundamental to social work.

「ソーシャルワーカーが目指すのは、国の中で定められている法律の範囲内での人権ではなく、もっと普遍的な人権なのだ」と先生はおっしゃいました。
それから、ソーシャルワークが見ていくべきものは、「その人が何を持つか(having;所得保障)」ではなくて、「その人の存在そのもの(being)」であるということも。

人間の存在そのものをより良い状態にするために(well-being)活動するのがソーシャルワーカーの専門性ということですね。

普遍的な人権と社会正義がソーシャルワークの基本になるにもかかわらず、日本国内で「社会福祉」というと、どうしても「社会福祉法」「児童福祉法」「身体障害者・知的障害者福祉法」「生活保護法」「老人福祉法」「介護保険法」といった制度の枠で見てしまう。すると、福祉の専門教育も、制度の枠でなされてしまって、「私は児童関係の専門家です」という言い方が出てきてしまう。
本当は、ソーシャルワーカーの専門性は特定分野の専門になることではなくて、専門職としての「価値観」をもち、それに忠実に行動することが重要なのではないか、ということを、先生はおっしゃっていました。

例えば児童虐待問題に対する対応。
関わる職種としてはソーシャルワーカーだけではなくて、心理専門家、医師、保健師などなど、色々な立場があるでしょう。
その中で発揮すべきソーシャルワーカーの専門性とは何なのか・・・。
虐待をしてしまうお母さん自身が問題意識を感じて相談しに来るならば、心理的なケアをして行くのが一番でしょうから、心理士が関わればいいでしょう。

ではソーシャルワーカーは何なのか。
「それは、虐待をしていることにすら、気づくことができていない人に対応して行くことなのではないか」と。

なぜあえて、「自分自身が問題に気づいていない人」に関わっていかなくてはならないのか。それは、「子どもの命を守らなくてはいけない」という価値観によるものでしょう。

だから、例えば対応のまずさで子どもが命を落としてしまったり、ワーカー自身が命を落としてしまったら、それは「専門家としての失敗」と言えるのではないか、ということでした。

一つの出来事に出会ったときに、それをどの視点から解決すべきなのか、そのためにどんな技術を使うべきなのか、何を見落としてはいけないのか― それを判断していく価値観が、それぞれの職種が持つべき「専門性」なのでしょうね。


それから、ソーシャルワーカーが価値観として持つべき「正義」とか「誠実さ」とか、「service」について。

「これは、個人個人に対するものではなくて、社会全体のあり方に対するものだ」とも、先生はおっしゃっていました。

「service」は、一般的に思いつく「customer service」のことではなくて、「尊厳や社会正義のために自分のエネルギーを割くこと」なのだと。
「一時期、病院で患者さんを“患者様”と呼ぶのが流行ったことがあるけれど、そういう意味の“サービス”ではないのだ」と。

「誠実さ」は個人に対するマナーではなくて、「いつも変わらぬ態度で倫理綱領に向き合うこと」なのだと。
つまりは、ソーシャルワークがもつ責任は、個別個別に対する態度というよりも、社会全体に対する責任なのですね。


「福祉をやってる人は優しくあるべき」みたいな風潮に、私はなんとなくずっと違和感を持っていました。「優しさ」って、誰のための優しさ?一方に対して良くても他方に対してはよくないかもしれない。
でも、個人に対しての優しさと考えるとものすごくぶれるけれど、社会全体と捉えると、とてもすっきりするような気がします。

「サービス」にしても同様です。「福祉サービス」とか「公共サービス」という言葉が使われる中で、住民や利用者を「顧客として扱う」というような言い方がされることがありますが、それがより良い社会作りに役立つというのはどうも違和感がありました。(これについては、私の大学院での論文のテーマとも重なってくるので、また別の機会に書きたいと思いますが・・・。)


私は議員活動も、ソーシャルワーカーの価値観を基本にしてやっているつもりです。たくさんの人に会う中で、意見の対立もあるし、どうすることが最善なのか、迷うこともあります。
だけどそんな悩む状況におかれても、個人個人に対する優しさという観点ではなくて、倫理綱領にある「すべての人間をかけがえのない存在として尊重する」という視点から見ていくことによって、解決していけることなのではないかと思ってもいます。

ソーシャルワーカーが一番大事にすべきは、技術ではなくて価値観であろう・・・そんな、北島先生の講義に、心にずっしりとした潤いをもらってきました。

※かとうぎ桜子を育てる会のHPはこちら
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プロフィール

かとうぎ桜子

Author:かとうぎ桜子
1980年生まれ。

保育士、ヘルパー2級、社会福祉士の資格を使って福祉の仕事をしてきました。
制度だけでは一人ひとりが安心して生活するまちを作るには不十分だと考え、誰もが安心できるまちのしくみ作りをしていきたいと考えています。

2007年4月の統一地方選で練馬区議会議員に初当選。

2010年3月、「市民参加と公共性―保育園民営化を契機として」と題する修士論文を書き、立教大学大学院・21世紀社会デザイン研究科を修了。

2011年4月 無所属で2期目に当選。

2011年末に子宮頸がんが見つかり、2012年春に円錐切除の手術をしました。その後は今のところ再発もなく元気に仕事しています。
この経験を活かし、がん検診の啓発など健康に関する課題にも取り組んでいこうとしています。

2015年4月、3期目に当選。

会派は市民ふくしフォーラム。

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