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依存症などの問題と居場所づくりについて

生活保護をバッシングする声の中に、「生活保護を受けていながら、仕事もせずにパチンコをしている人がいる」というものがあります。今日のブログではこの問題について書きたいと思います。

①叩く側のとらえ方の問題

まず、そもそも私たちは、自分の知っている人の中に何人、生活保護の受給者と判明している人がいるかということを改めて考えてみる必要があると思います。

生活保護を受けている人の多くは、生活保護で暮らしているのは本意でないと思いながら生活しており、あまり周囲にそのことを言わないと思います。
だから、私たちの周りには、私たちが「この人は生活保護を受けている」と把握している以上に実はもっとたくさん生活保護を受けている人がいて、そういう人たちは目立たないから気づかないだけです。(なにせ、全国で208万人いるわけですから、本当はすぐ身近にいると考えて間違いないでしょう。)

だから、たまたま知っている1人、2人がパチンコをしていたからといって、それがあたかも生活保護全体の問題であるかのようにとらえるのは間違っていると私は思います。


②自分の生活の管理のしかたとギャンブル依存症の問題

たとえ生活保護を受けながらパチンコをしている人がいたとして、この人は、働かなくてもお金が入るからパチンコをする、だから生活保護を切ればしゃきっと仕事を始めるか、というとこれは違うと思います。


お金と時間があるからという理由だけでパチンコをやるわけではない―。

まずひとつにはなんらかの理由(たとえば障害があるのにそれに応じた適切な教育環境になかったとか、親や周りの大人が生活の適切な管理のしかたを教えてくれる環境になかったとか)によって、1ヶ月・1年・一生という目安をもってお金を使ったり生活の設計を立てるという技術を身につけられていないという人も中にはいます。


そしてまた、まだまだ理解が広がらないのが「依存症」の問題だと思います。

アルコール依存症については、「本人の努力だけでなく、適切なケアがなければ克服が難しい」という理解は広がってきていると思いますが、一般的に依存症の実態の理解はまだまだ十分ではないと思います。
ギャンブル依存、アルコール依存、薬物依存、性依存など、様々な依存症がありますが、本人の自己責任ととらえられがち。
たとえば薬物依存については、取り締まりの対象として、使った人は悪者として認識され、更生のためのケアと社会の理解が不十分であるとも言われています。

過酷な人生を送ってきた人にとって、何か心のよりどころになるものがなければ生きていけない。健全な形の「居場所」が見つかればいいけれども、そうでなかった場合には何かに依存しなければ心が壊れてしまう。
そういう中で起きるのが「依存症」です。
DVや虐待の問題も、相手との対等で健全な関係が築けずに不健全な依存の関係に陥るために起きると考えられると思います。

依存する人を悪者にするのではなくて、なぜ依存するに至ったかを理解して、依存状態からの脱却と健全な関係性をつくる支援が必要です。

パチンコなどのギャンブルへの依存も同様です。

だから、「生活保護でパチンコをするなんて悪いやつだ、パチンコに使うお金を与えなければいいんだ」というだけではその人の人生は立て直すことができないので、依存に対する正しい理解と克服のための適切な支援をする必要があります。



③居場所づくり

ギャンブル依存とまではいかなくても、パチンコ屋はある種の「居場所」になっているのではないかと感じることがあります。

生活保護とはまったく関係ない話ですが、私が喫茶店とか飲み屋に行って、他のお客さんの会話を聞いていると、パチンコの話をしている人は結構たくさんいます。
パチンコが趣味の人が多いんだなあと思います。

それで、何が楽しいのかなあ・・・と、さらに話を聞いてみると、どうやらパチンコそのものの面白さ以外に、だんだん顔見知りが増えてくる面白さも感じているようです。
たとえ会話をすることはなくても、いつも同じ時間に同じ人がいて、パチンコをするときのそれぞれの癖もだんだん見えてくる。そして、その中に自分が座る場所もあるという居心地の良さ。
また、喫茶店とか飲み屋とかに行ったときにも、パチンコを通して他の人と共通の話題を持てるということ。

それがある種の魅力なのではないかと感じました。

依存しない程度に趣味として、そういう楽しみ方をするのは一つの選択かなとは思うのですが、使い方を間違えるとそこが唯一の「自分がいても良い居場所」になってしまうおそれもあるだろうと思います。

だから、生活保護を受けている人や、非正規で厳しい生活をしている人、また逆に仕事がとても忙しくて趣味を楽しむ時間があまりない人などが、パチンコ屋以外に、「ここは自分が来ても良くて、けっこう居心地が良いな」と思える居場所を作るということも大切なことではないかと思います。



この数回にわたって、ブログで貧困問題について取り上げてきました。

災害時の日雇い労働者のこと

生活費の貸付制度と連帯保証人の問題

住まいのセーフティネットの問題

非正規労働者が増え続けているという課題

子どもの貧困問題

貧困問題、生活保護のことなどを議論する中で感じるのは、「福祉を利用する人は、利用していない人と比べたら悪い状態の生活をしている限りにおいて許される」と考えている人がいるということです。
これは「劣等処遇」という考えですが、福祉を利用する人を自分とは違う一段低い人間と見る、差別意識であるといえます。
そして一番怖いのは、この差別意識を持っている人たちが、自分の持つ感情を「差別意識である」と気づいていないことです。

今現在、どんな状況に置かれている人であっても、「この世に生まれてきた一人の人間の価値として、私より高い人も、私より低い人もいないんだ」という認識を広めていかなければ、社会はどんどん、ぎすぎすした、豊かさに欠けるものになってしまいます。

ぜひ、そんな視点から、今後も皆さんとともに貧困問題、福祉のあり方について考えていければと思います。

※かとうぎ桜子のHPはこちら
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桜子のツイッター

プロフィール

かとうぎ桜子

Author:かとうぎ桜子
1980年生まれ。

保育士、ヘルパー2級、社会福祉士の資格を使って福祉の仕事をしてきました。
制度だけでは一人ひとりが安心して生活するまちを作るには不十分だと考え、誰もが安心できるまちのしくみ作りをしていきたいと考えています。

2007年4月の統一地方選で練馬区議会議員に初当選。

2010年3月、「市民参加と公共性―保育園民営化を契機として」と題する修士論文を書き、立教大学大学院・21世紀社会デザイン研究科を修了。

2011年4月 無所属で2期目に当選。

2011年末に子宮頸がんが見つかり、2012年春に円錐切除の手術をしました。その後は今のところ再発もなく元気に仕事しています。
この経験を活かし、がん検診の啓発など健康に関する課題にも取り組んでいこうとしています。

2015年4月、3期目に当選。

会派は市民ふくしフォーラム。

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