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大阪 その5―兵庫県のけま喜楽苑
また少しブログの更新の間があいてしまいました・・・。
7月12日の武庫川女子大の授業のために出かけた関西旅行。13日も残って施設見学をしました。
13日の午前中に行ったのは、
施設そのものがユニークな作りなので、建築の観点からの見学者も多い、というお話だけ先に聞いて、出かけました。
ちなみに「けま」というのは地名で、「食満」と書くそうです。
行って話を聞いてから、「あ、この施設に関するドキュメント番組を学生時代に見たことがあった」と思い出した・・・(^^;
私が見たビデオの内容、記憶をたどって思い出してみると―
喜楽苑は、特別養護老人ホーム(特養)。
今は質を上げるために努力をしている施設も増えている。ベッドに縛り付けられている、なんていうのは虐待と認識されて、縛らない介護をしている施設が増えている。それでも、報道されている通りに虐待をしている職員がまだいるのも現状。
喜楽苑ができたのは、昭和58年。その頃は今よりももっと施設は大変な状況だったと思います。施設の部屋は4人部屋など複数人数で、病院の入院する部屋みたいなイメージ。「住む場所」という感じはしないですよね。
施設に入った高齢者の活気がなくなってしまう原因はなんなのか。
家とは認識できないだだっ広い建物に突然置かれてしまうこと。子どもか孫かという年齢のスタッフから赤ちゃん言葉で話しかけられたり命令口調で話をされること。食事の時間など、自分の意思で動く時間が少なくなること。そんなことを理事長さんが話してくれました。
今でこそ減ってきていると思いますが、スタッフが目を離した間に動こうとしてベッドや車椅子から落ちてしまって怪我をするのは困るからと、高齢者が縛り付けられているなんてこともあった。
一定の時間にお風呂に入れるために、ずらっと並べて流れ作業的にお風呂に入れる、なんていうのは私がヘルパー実習をやったときにも行われていましたし。
ご飯の時間も決まっていることが多い。しかも、職員の勤務体制に合わせて夕飯が16時とか17時とかってことも。これは病院も同じですね。そして、病院でも今は18時頃食べられるような工夫をしているところも増えてはいますが。
喜楽苑の理事長は、そんな福祉施設を見て、「高齢者が最後までもっと自分らしく生きられるような施設を作りたい」と思ったということでした。
私も、初めてヘルパーをやった頃、ケアマネさんが高齢者に「また物忘れなの!?」と怒鳴っているのに遭遇しました。物忘れをするから福祉を利用してるのに、なんで怒られなくちゃいけないんだろうか、と思いました。
そんなのを見ていると、「私みたいに自分の好きなように生きている人間は、年をとって介護が必要になって施設にでも入ったら、『加藤木さんはわがままだから』『また加藤木さんが問題行動よ』なんて介護士さんに言われたりするんだろうなあ」としみじみ。福祉の仕事をしていながらこんなこと考えるのは良くないですが、正直長生きを頑張る自信がないなあと思いました。
そんなときに出会ったのが喜楽苑のビデオ。
ビデオでは、認知症の高齢者同士がなにやら楽しげに話し合っている。言葉の内容を聞いているだけだと、どうも理解しにくいことを言っていたりするわけですが(^^;
でも「うん、うん、そうだね。大丈夫大丈夫」と、認知症の人同士が相手の話に相槌を打っている。言葉を超えたもっと深いところで共感しあってるのかなあという印象。
認知症の高齢者は「家に帰ります」等と言って、一人で出かけていってしまうことがあります。一般に「徘徊」と呼ばれ、「問題行動」とされるその行為を、喜楽苑では「外出」と捉えていて、出かける高齢者を少し離れたところで見守っている。それでもどうしても見失ってしまった時には、近所の人が助けてくれている。
利用者さんで連れ立って近所の居酒屋に飲みにも行く。
良かった。こんな施設があるならば、私も安心して長生きできると、ビデオを見てホッとしたものです。
それでも、昭和58年に作った施設は4人部屋。カーテンをきっちりと引くなど、プライバシーの確保には努力をしていたものの、もっとハードも良くしたい、という思いで作られたのが、今回私が見学に行ったけま喜楽苑です。
けま喜楽苑には、特養とグループホームがある。グループホームの入り口はこんな感じ。
なんか素敵な料理屋さん、という感じですね。
特養のほうもそうですが、「ここは住む場所だな」と分かりやすい造りになっています。
壁沿いにずーっと手すりをつける、なんていうことも「普通の家ではあり得ないこと」だからやっていない。代わりに、歩きにくい人には杖や歩行器、車椅子といった道具を充実したものにしている。
特養はすべて個室で、自分の家から好きな家具を持ち込むこともできる。
ところで、私が学生時代にビデオで見た施設と、今回見学に行った施設が同じだとハタと気づいたのは、「この施設にはバーのような部屋がある」と紹介されたからでした。
カウンターがあって、スタッフが仕事の後に懇親を深めるためにも使っているし、利用者さんも使っている。「喜楽苑は元々、居酒屋に行ってたんですよ。けまの施設は繁華街に少し遠いので、こうして中でも飲めるスペースを作ったんです」という説明。これでハッと学生時代のビデオを思い出したわけです。
(私の琴線に触れるキーワードが「酒」であるということが改めてよく分かったわけですが・・・ ^^;)
喜楽苑では、食事時間も幅を持たせている。朝ごはんは早くに食べる人もいれば、「昨日飲み過ぎたから」と遅く食べる人もいる、ということでした。
ちなみに、練馬区の社会福祉事業団がやっている高齢者施設に視察に行った時、「食事時間に幅はありますか?」と質問したところ、「いいえ。みんな一緒です。みんな一緒に食べたいと思ってるみたいですよ」という返事が返ってきました。
多くの施設が、そんな感じなんだと思います。
学生時代のビデオの記憶とあわせて考えてみて、喜楽苑の魅力は、ただ施設が良いということではないということを感じます。ただ施設の良さだけを考えれば、いくら上を見てもきりがなく、有料老人ホームとの比較もあって、どこまでを「公的施設」とするかという難しさも出てきます。
喜楽苑の先駆性は単に施設が個室である等の表面の問題ではなくて、誰もがどんな身体状況になっても自分らしく生きる方法を追求した表れであるということなんだと思います。
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